東京高等裁判所 昭和28年(う)3227号 判決
被告人 川上繁雄
〔抄 録〕
論旨第三点について。
「被告人は昭和二七年一二月懲役三年の刑を終えて浜松市に帰り故らに傷害致死殺人未遂等の前科を誇示し所謂街の顏役として市内の映画館等に出入しておつたものであるが」との原判示第二の冒頭事実中の「故らに傷害致死殺人未遂等の前科を誇示し所謂街の顏役として」と云う点については所論のごとく直接の証拠はないようであるが、原判決挙示の証拠を綜合するときはそのような事実は認められないことではない。
又右のようなことを起訴状に記載することは所論のごとく刑事訴訟法第二五六条第六項に違反していることかも知れない。然しかような手続の違背があつたからとて本件のごとき事実では判決に影響を及ぼすこと明らかな場合とは解せられない。
恐喝罪の成立に相手方の畏怖心と恐喝者との言動の間に因果関係の存在を必要とすることは所論のとおりであるが、恐喝者の行為は必ずしも明示的又は積極的であることを必要としない。自己の性行、経歴、地位、勢威を利用して害悪を暗示して人を畏怖せしめてもよいし、これらによる相手方の畏怖心を奇貨として之を利用して財物を交付させる場合でもよいのである。